社会派小説の映画大作邦画ランキング

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いわゆる社会派といわれる小説は1960年ころから台頭しました。


戦後の混乱期を乗り越え復興が一段落したところで、それまでの社会の歪みを振り返る余裕がでたからでしょうか。


そんな社会派小説を原作とした邦画ベスト3を紹介します。


どの作品も俳優は重量級の名優揃い、上映時間も2時間半前後と大作ですがしっかり集中して観られます。





第1位:「砂の器」(1974年)

砂の器1974年
社会派推理小説というジャンルを切り開いた松本清張作品の映画版。


上映時間143分の大作です。


監督野村芳太郎、脚本は橋本忍・山田洋次と贅沢のスタッフ。


国鉄蒲田操車場内で身元不明の殺害死体が発見されます。


捜査するのは今西(丹波哲郎)、吉村(森田健作)の両刑事、死体の身元探しと犯人探しは難航を極めます。


映画の前半部分はこの推理・捜査を描いていて、やがて死体の身元は元巡査の三木謙一(緒方拳)と判明、捜査線上に現代音楽の旗手和賀英良(加藤剛)が浮かび上がります。


前半の謎解き部分も面白いですが、圧巻は後半の回想シーン。


本浦千代吉(加藤嘉)・秀夫(春田和秀)父子が各地を差別を受けながら漂泊するシーンです。


ハンセン病患者の千代吉と秀夫が風吹きすさぶ日本海の海岸沿いを、氷柱垂れ下がる厳寒の地を、そして桜咲く春の道をお遍路姿で物乞いをしながらあてどなく彷徨います。


美しい日本の映像とテーマ曲”宿命”のなか、病と極貧そして差別の中でも揺るがない父子の強い絆と愛情が描かれています。


首に汚れた包帯を巻いた加藤嘉が痛々しいほどの演技です。


すごい俳優さん。


少年秀夫役の春田和秀も気丈な演技、小学校を見つめるシーンや父子別離のシーンが泣かせます。


ハンセン病という微妙なテーマながらも見事な脚本。


砂の器は何回もテレビドラマ化されていますが、映画はこれ一本。


本作以上の映画は撮れないことを映画関係者はわかっているのじゃないでしょうか。






第2位:「白い巨塔」(1966年)

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旧帝国大学の名門浪速大学医学部は東教授(東野英治郎)退官後の次期教授をめぐって様々な泥仕合が演じられる。


東の下で助教授を務める財前五郎(田宮二郎)は優秀だが野心家、東や他の教授陣と齟齬をきたす。


そのため東は自分の出身大学東都大学の船尾教授(滝沢修)の愛弟子で金沢大学医学部の菊川教授(船越英二)を次期教授に迎えようと決意、教授選は熾烈を極めるというストーリーです。


田宮二郎のギラギラした演技が傲岸不遜な財前五郎役にピッタリです。


シャープな演技の滝沢修が医学界の超エリート船尾教授をていねいに演じています。


その他もみな名脇役を揃えた重厚な俳優陣でキャスティングにミスがなく、さすが山本薩夫監督。


大学医学部内部の権力闘争の他に、国立大学医学部間の系列問題・医療過誤裁判・医師会の腐敗などを描いた社会派日本映画の金字塔。


それにしても浪速大学(おそらく大阪大学がモデル)や東都大学(おそらく東京大学)が仮名なのに、金沢大学だけは実名なのはどうしてかな。


第3位:「金環食」(1975年)

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石川達三原作の同名小説の映画化作品。


原作にほぼ忠実に作られています。


155分に及ぶ長い作品ですが途中あきさせません。


ダム開発に絡む汚職の裏側と政界・財界内の駆け引きと癒着という日本の暗部を描いた映画。


1964年、実際に起きた九頭竜川ダム事件を題材にし、登場人物もほぼ実在の人物をモデルにしています。


日本政治史の勉強にもなりそうです。


俳優陣ほぼすべてが日本で名優・演技派として知られている人々、やっぱり政財界の暗部を描く映画にはこれくらいの俳優さん達を揃えないと単なるスキャンダル・暴露ものになってしまいそうですね。


仲代達也が切れ者で狡猾な星野官房長官をいやらしく演じていていい雰囲気です。


金融王石原参吉役は名優宇野重吉、下品でいかにも金の匂いを嗅ぎつけるのに長けている金貸し役の演技がソツがないですね。


本作品を見た時は日本の政界や財界・官界ってこんなに汚いのかと呆れたものですが、その後ロッキード事件やリクルート事件、その他もろもろな事件を経験した私達はちょっと麻痺してしまったようですね。


まとめ

社会派小説の代表作をしていて、どの映画もいろいろ考えさせてくれる名作揃いです。


昭和の高度経済成長期の時代の暗い部分を描いていますが、どこか牧歌的に感じます。


もっと大きな不正や残虐な事件・テロのニュースに慣れてしまったからでしょうか。


白い巨塔・金環食の監督は山本薩夫。


橋本忍が砂の器・白い巨塔の脚本を担当。


3つの映画すべてに加藤嘉が出演しています。






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