日本では作れないファンタジー映画ベスト3

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「ファンタジー」と聞くと、日本人にはファンタジーを表現するために何か大仰な世界観を構築しなければならないような姿勢があるようです。


しかし、洋画では何か表現したいことがあって、それをやっているうちにファンタジーになっていた、という感じがします。


ファンタジー映画に関しては、日本人はまだこのような姿勢で作るのが難しいようです。


ここで紹介するのはタイプは違えど日本では作れなそうな作品です。





第1位:「ダーククリスタル(1982年、ジム・ヘンソン、フランク・オズ監督)」

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セサミストリート」で有名なマペット操者である2人がタッグを組んだ映画。


邪悪なスケクシス族が支配する惑星で、世界を破滅から救うという使命を帯びてゲルフリン族のたった2人の生き残り、少年ジェンと少女キーラの冒険の物語です、と書けばありきたりで脚本家が左手で書いたファンタジーに思えます。


しかし、全編個性的なクリーチャーたちがこれでもか、と登場し、て画面内で躍動しています。


登場するクリーチャーだけでなく、背景なども非常に丁寧に作りこんでおり、一つの世界を想像しようという情熱とそれを実現する技術が見事に結集しています。


個人的には「悪役」であるはずのスケクシス族のキャラクター造形が気に入っています。


邪悪な支配者でありながら、権力には興味を示さないマッドサイエンティストや美食家、宝石大好きなどそれぞれに特色があります。


スケクシス族の性格はキリスト教の「七つの大罪」をそれぞれ具現化したものらしいのですが、それだけに人間臭さ(?)が際立ちます。


もちろん、ファンタジー特有のカタルシスを伴う大団円も用意されています。


これは色々な意味で日本では作れない、と思い1位にしました。





第2位:「エクスカリバー(1981年、ジョン・プアマン監督)」

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「過去の王、そして未来の王」であるアーサー王と「円卓の騎士」の伝説は今まで何度も映像化されていますが、この作品はその中でも白眉とも言えるものです。


もちろん、この映画はアーサー王伝説の華麗な映像叙事詩を堪能させてくれるのですが、登場人物の迷いの末の破滅を描き出している点に心を惹かれます。


アーサーの父、ウーゼルは魔術師マーリンに次の王と目されながら、人妻への愛欲の末に非業の死を遂げます。


アーサーの后グネヴィア、騎士道の精華とされたランスロットは道ならぬ恋で王国を崩壊へと導きます。


魔女モーガナも支配欲の末に、封印したと思っていたマーリンの逆襲で滅び、イングランドを支配しようとしたモルドレッドは、「人が作りしもの」では傷つけられない魔法の鎧を身につけて父であるアーサーと対決しますが、エクスカリバーに貫き通されます。


エクスカリバーは人が作ったものではなかったからです。


この最後の決戦で、姿を消していたランスロットはアーサーに味方して獅子奮迅の戦いをしますが、遂に深手を負ってアーサーに赦され、その腕の中で息を引き取ります。


こうして登場人物たちは、自分の迷いの代償ともいえる最期を遂げていき、エクスカリバーを湖に返したアーサーもアヴァロンへと運ばれていくのです。


「ジークフリートの葬送行進曲」に完全にシンクロした映像とともに迎えるラストは、この一大叙事詩を締めくくるにふさわしいものです。


アーサー伝説のアレンジの仕方が、アーサー王伝説が身近だからできる、つまり母国語だからできる「もじり」や言葉の言い換えのようであり、日本では作れなさそうな2位としました。

第3位:「バロン(1989年、テリー・ギリアム監督)」

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「ほら話」というのも一種のファンタジーといえるかもしれません。


現実でない、と一笑に付すこともできる話とわかっていても、そこからなにか勇気づけられるものを感じることができます。


「ほら話」と言えば、「ほら男爵」ことミュンヒハウゼン男爵が有名ですが、この映画「バロン」の主人公はこのミュンヒハウゼン男爵なのです。


舞台はオスマン・トルコの軍勢に包囲されたドイツの街、そこで人々の前に現れた老人こそミュンヒハウゼン男爵であり、この戦争の発端は自分にあるから自分で解決する、と言ってかつての異能者ぞろいの部下を探す旅に出る、というのがあらすじです。


しかし、ストーリーは二の次で、映像化された荒唐無稽なほら話の中に、チクリとした現代社会の風刺が随所に散りばめながているのがこの映画の骨子だと思いました。


ホラとエスプリとユーモアが渾然となって生きる希望を見失わない、ホラどころか生きることへの讃歌であるとさえ思われます。


ヨーロッパの社交界にはかつて、「不死の人サン・ジェルマン伯」なる謎の人物がいて、モーゼのエジプト脱出やノアの方舟などを、さも見ていたかのように生き生きと語って人気者となっていました。


客の一人がサン・ジェルマン伯の召使に、「君のご主人が何千年も生きているというのは本当かい?」と尋ねたところ、召使は真面目な顔で「私もお仕えしてまだ300年ほどなので、その前のことはわからないのです」と答えたそうです。


こういうことをさらっと言えるヨーロッパのエスプリが根底にある映画は日本ではなかなか作れなかろう、と第3位にしました。

まとめ

欧米の映画監督が日本映画の影響を受けて多くの作品を作っているのは広く知られています。


(「スター・ウォーズ」の中に黒澤映画の影響を見つけるのは難しいことではありません。

)しかし逆に日本人も欧米の映画を見て同じように感じているのです。


相手のように「作れない」のは悪いことではなく、異文化を理解していく過程だといえるでしょうあ日本人には作れない映画があることと、日本人にしか作れない映画があることは文化の表裏を示しているのではないでしょうか。







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