良質ホラー系のゾクッとするアニメベスト3
ホラーブームの夏はもう過ぎてしまいましたが、何度でも見返せるアニメなら季節感なんてまったく気になりません。
耳にまとわりつく蝉しぐれ、夜中寝苦しくて眠れないときに聴こえる物音、ふとしたときに気になる網戸の隙間……。
そんなじわじわとした怖さですずしくなりたいという方、そしてどうせ見るなら質の良いものを、という方におすすめです。
第1位:「ゴーストハント」
ホラーといえば、小野不由美の「悪霊シリーズ」は少女向けレーベルとして出版されたノベルながらも怖さの質が違うと評判です。
そんな「悪霊シリーズ」を月刊誌「なかよし」でコミカライズしたものが「ゴーストハント」そして、小説と漫画版両方を掛けあわせてアニメ化されたのが、本項でとりあげるアニメ版「ゴーストハント」です。
主人公の女子高生谷山麻衣は、ごくごく普通の、そして少しだけ怖い話に興味がある少女。
ある日学校で友人と共に旧校舎に纏わる怪談をしていると、そこに白皙の美青年渋谷一也が現れます。
実は彼は、件の旧校舎で起こる心霊現象の調査のためにやってきた「渋谷サイキックリサーチ」という心霊研究者でした。
ひょんなことから麻衣は彼を手伝う羽目になり、旧校舎の現象を解決するために集められた他の霊能者たちとともに心霊調査にかかわることに。
そしてそんな麻衣を、旧校舎の怪異が襲います。
この作品の優れているところは、全ての現象に理屈立った説明がつけられているところです。
ホラーではありがちな、意味もなく巻き込まれ運よく助かる、などという行き当たりばったりなものではなく、筋道立てて調査していく過程で事件が進んでいくようすはホラーと言うよりもミステリーに近く、幽霊を信じない!
という方でも楽しめる作品になっています。
第2位:「ぼくらの」
鬱アニメとして名高い「ぼくらの」ですが、ホラーとしてもとらえられると思いましたので入れてみました。
夏休みに訪れた島で、「ゲーム」をしないかとココぺリと名乗る謎の青年に誘われて15人の子供たち。
その内容は、「巨大なロボットで戦い、地球を守る」というもの。
子供らしい好奇心で契約を結んだ彼らは、最初のうちはわけもわからずロボットを操縦し敵のロボットを倒す。
だが徐々に、自分たちが巻き込まれた事態が何なのかを理解していき、葛藤し、狂い、そして生きることとは何かを考え、最後に決断を下すこととなります。
集められた15人の子供たちそれぞれにストーリーがあり、「デジモンアドベンチャー」のようなキャラクターそれぞれが立っている群像劇のような印象も受けます。
この作品を詳しく説明すると盛大なネタバレになってしまうので、一見の価値アリ!
としか言えないのですが、自分がこの作品で素晴らしいと思うのは「椅子」です。
彼らが操縦するロボットには、ココぺリと契約した時点で子供たちそれぞれが普段使っている「椅子」が、操縦席としてダウンロードされます。
立派な革張りの椅子もあれば、幼児ようの簡易椅子もあり、形も大きさも様々な椅子が、子供たちの個性と彼らの育ってきた環境を象徴しているように思えてなりません。
物語にも少し関わってくるので、ロボットの外のシーンで椅子を見つけてしまうと思わず「ああ!」と声が出てしまいます。
「ぼくらの」というタイトルにこめられた思い、すこし長めの作品ではありますが、一気に見てしまうことをおすすめします。
そして生きることとは何かを、考えてみて下さい。
第3位:「Another」
近年話題になったホラーアニメです。
原作小説を書いた綾辻行人は、実は一位にとりあげた「ゴーストハント」の原作、「悪霊シリーズ」の原作者小野不由美の夫です。
コアなミステリーを書く作家として有名だった綾辻さんが書いたこの作品は、日常のなかにふっと湧いて出る「死」という恐怖を上手に描き出しています。
「Anotherだったら死んでた」なんて言葉ができてしまうくらい、この作品の中での「死」は唐突で、かつ鮮烈です。
夜見山という田舎町に、東京から心臓の療養のために引っ越してきた榊原恒一は、クラスメイトなのにまるで空気のような扱いをされている不思議な少女見崎鳴にひかれます。
見崎のことが気になる彼は、クラスメイトが何故か彼女を「いないもの」のように扱うことに疑問を覚え、いじめられているのでは、と関わるようになるのですが、クラスの態度はいじめとは違い、むしろ彼女を畏れているようでした。
何故かと理由を聞こうにも、はぐらかされて事情をなかなか教えてもらえずやきもきしているところに、唐突に知人の「死」の知らせが。
それはただの始まりにすぎず、見崎という少女がそんな扱いを受けている理由の一端でもあったのです。
何よりこの作品の特筆すべきところは、唐突に「死」がやってくるところ。
最初の死者がでたあとから、何でもない日常のワンシーンでも身構えて見てしまうようになります。
ラスト二話の怒涛のような流れも見事としか言いようがありません。
この作品も又、部分的に理屈立ったミステリーとしても楽しめるので、一周目で度胆を抜かれた後にもう一周見直してみると、新たな発見があるかもしれません。
まとめ
他にも良質な「こわい」アニメはたくさんあるのですが(「新世界より」など)、あえてこの三つを挙げさせて頂きました。
ホラーと言えば幽霊。
そんな定義が世間には出回っていますし、間違ってはいないと思いますが、自分は幽霊だけがホラーではないと思っています。
人間がもつ感情、人間関係のなかで生まれる歪み、些細なすれ違いで生じる諍い。
どれもとても怖いです。
ベスト3の作品はどれも、幽霊という絶対的なこわい存在以上に、そんな「人間のこわさ」が現れていると思うものを選びました。
真夜中に部屋を暗くして、ヘッドフォンでこれらのアニメを見て見れば、怖いのと同時に、「何が」怖いのかを見つめなおすことにもつながると思います。
加えてどれも見事に構成されて、10話以上という長丁場になりがちなアニメであるのに、中だるみをまったく感じさせない良質なアニメばかりです。
怖いだけでなくちょっとほっとするシーンもあるので、ホラーが苦手だという方にもおすすめです。