「生きる」ということを考えさせてくれる心温まる邦画ベスト10ランキング
目次
第10位 「ハンサム★スーツ(2008年)」
この映画は、鈴木おさむの小説を原作にした映画で、キャッチコピーは「人生を変える夢のスーツ、あります」というラブ・コメディ映画です。
とっつきやすい内容で、話の展開もおもしろくて、観やすい映画だと思います。
物語はある定食屋「こころ屋」を舞台に始まります。
主人公・大木琢郎はその店主です。
彼の料理の腕は確かで、常に店は繁盛していました。
彼は33歳で独身で「うちの飯食って、不幸になる人は出したくない」という優しい性格で、友人やお客を大切にしていました。
そんな彼には悩みがありました。
それは、不細工で女性にもてた経験が全くないことでした。
ある日、こころ屋のバイト店員募集のポスターを見て、きれいな21歳の女性・星野寛子がやって来ました。
彼女は不細工な琢郎を見てもやさしく、よく働いてくれました。
琢郎は彼女を好きになりました。
そして、彼は寛子に告白をしますが、ふられてしまいます。
琢郎は親友の結婚式に出るために、スーツを買いに行きます。
琢郎はそこで着るだけでハンサムになれるという「ハンサムスーツ」を買います。
そして、琢郎はそのハンサムスーツで「光山杏仁」というモデルになり、人気を得ます。
琢郎はこころ屋の店主とモデル「光山杏仁」としての二重生活が始まります。
そんな中、橋野本江という女性が現れます。
琢郎は…という物語です。
主人公・大木琢郎を塚地武雅が、光山杏仁を谷原章介が、星野寛子を北川景子、橋野本江を大島美幸が好演しています。
その脇を、池内博之、本上まなみ、ブラザートム、伊武雅刀、温水洋一、中条きよし等が固めています。
特に、伊武雅刀の過剰なまでの怪演ぶりには笑わせてくれます。
この映画のメッセージは簡単で「人は見た目ではない」ということですが、最後のどんでん返しでは、おもしろくて感動します。
それまでの話の展開も見せ場が仕掛けられていて、いいセリフも出てきます。
特に琢郎の「俺になれば“大きな幸せ”を手に入れることができる。
“大きな幸せ”を手に入れるためには“棄てなければいけないもの”もあるんだ」とか、「“大きな幸せ”を手に入れた代わりに、たくさんの“小さな幸せ”が消えて行きました」というセリフには教えられるものがあります。
ありのままの自分でいい、人は見た目ではなくてやっぱり心、いくら取り繕ってもダメという見失いがちな教訓を、軽妙に教えてくれます。
これは楽にハートフルな気分にしてくれる快作です。
第9位 「守護天使(2009年)」
この作品は上村佑の第2回日本ラブストーリー大賞受賞小説を映画化したものです。
さすが受賞作品だけあって物語は、ハートフル・コメディで、ちょっとはまってしまいました。
主人公は安月給で冴えないサラリーマン・須賀啓一です。
彼は毎朝、鬼嫁から小遣い500円を貰うメタボでブサイクなメガネ男です。
そんな彼が女子高生・宮野涼子に初恋をします。
須賀はある日、彼女が悪い奴らに狙われていることを知り、「彼女を護る!」と決心します。
そして、悪友でチンピラの村岡とイケメンだが引きこもりの大和の協力を得て、彼女を助けようとします。
しかし、彼らを待ち受けていたのは…。
須賀は、彼女を助けてヒーローになれるのか…という物語です。
主人公・須賀をカンニング竹山が情けない中年男を、情けなく熱演しています。
ただ、映像的に彼の褌一丁姿は観たくなかったですね。
なぜここまでと思いましたが、最終的に必要だった演出で納得ができました(笑)。
宮野涼子を忽那汐里が、悪友・村岡を佐々木蔵之介が、引きこもり大和を與真司郎が、鬼嫁・勝子を寺島しのぶが、あと、波瑠、大杉漣、佐野史郎、池内博之、柄本佑、日村勇紀(バナナマン)、吉田鋼太郎、キムラ緑子、升毅が彼の脇を固めます。
みんな、好演しています。
特に、柄本佑は悪役・バラバラ殺人犯を不気味に淡々と怪演して、終盤のシーンは見物です。
日村勇紀も熱演していました。
さすが、寺島しのぶ、大杉漣、佐野史郎、吉田鋼太郎です。
各々いい味を出して、映画のスパイスとなっていました。
数々の映画やドラマの音楽を担当している佐藤直紀の音楽も良く、私は自然と映画にひきこまれました。
この映画は、結構、心に訴えるところもありました。
須賀が自身の人生を振り返って村岡に「生きるって、苦痛の連続だろ」という言葉は、私的に苦痛なく生きている人間なんていないと思うので、思わず頷いてしまいました。
また、鬼嫁に須賀が「正しいことをやっている。
それだけは誓って言えます」という必死にお願いするシーンには感動しました。
それと大和が須賀に協力している訳を「俺、生きるって、ほんと、みっともないことで、でもそれでいいんだって思えてきて、…」と言うシーンでは、「生きる」ということを考えさせてくれました。
私は松下幸之助の「生きているだけ運がいい」という言葉を連想しました。
一見の価値のあるラブ・コメディで、心温まる映画です。
第8位 「自虐の詩(2007年)」
この映画は、業田良家の4コマ・コメディ漫画が原作なので、最初はなめて観ていました。
しかし、単なるコメディ映画ではありませんでした。
いい意味で完全に裏切られました。
舞台は大阪の下町、田舎出身で幼い頃からブス・暗い・貧乏などで笑われていた女性・森田幸江が、元ヤクザでチンピラの葉山イサオとの生活を描いたドラマです。
イサオは無職で、趣味はパチンコ(イサオにとってはこれも仕事)、生活は幸江が中華料理屋で働いて、二人でおんぼろアパートで生活しています。
無口で喧嘩っ早いイサオは気にくわないことがあると、ちゃぶ台をひっくり返すのが癖でした。
イサオの役は阿部寛が演じているのですが、これがまたおもしろくて、髪はパンチパーマをかけて、ほんまのチンピラみたいで好演しています。
ちゃぶ台返しをするところは、この映画の見物で、豪快です。
「一度はやってみたい!」と思っちゃいます。
ブスの幸江の役を中谷美紀が演じています。
彼女はこれで第31回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞しただけあって、メイクや衣装の効果もあるんだろうと思いますが、本当に薄幸な女性に変身しています。
中谷の演技力はすごいなと思いました。
最初の方は「幸せになりてぇすか?」と唯一の友だちを言い合うシーンがあって、この先、どういう展開になるのかなあと心配でしたが、アパートの管理人のカルーセル麻紀、幸江に恋する中華料理屋の店主の遠藤憲一、銀行強盗で捕まる幸江の父の西田敏行が脇を固めていて、明るく、楽しいものになっています。
個人的には特にカルーセル麻紀がええ味を出していて、映画を引き締めているように感じました。
最初にいい意味で裏切られたと書きましたが、途中は何も考えずに笑って観てられますが、ラスト近くなってくると、シリアスなシーンになってきて、最後は哲学的にすごく考えされるものになっています。
最後に幸江が言うセリフが強烈です。
「幸や不幸はもういい。
どちらにも等しく価値がある。
人生には明らかに意味がある」とセリフです。
幸江が最初の方で言っていた「幸せになりてぇすか?」というセリフも合わせて、「幸せ」ってなんだろうとすごく考えさせられ、感動しました。
本当にラストは涙ものです。
騙されたと思って観て損はない、笑いあり・涙ありの心温める映画です。
コピペチェックをする
第7位 「ツレがうつになりまして。(2011年)」
この作品は細川貂々が幻冬舎から出版したエッセーを映画化した作品です。
キャッチコピーは「ガンバらないぞ!」「すこやかなる時も、病める時も、君と一緒にいたい」で、映画は題名から、うつ病を知っている人向けのような作品と思われますが、うつ病を知らない人に“うつの人の悩み”などを知る契機として観ていただきたい傑作です。
物語はこうです。
主人公・髙崎晴子は漫画家で幹夫と結婚して5年目でした。
子供はおらず、家に「イグ」というイグアナを飼っていました。
晴子は幹夫のことを「ツレ」と呼んでいました。
髙崎幹夫は、コンピューターのクレーム処理の仕事をするスーパーサラリーマンでした。
彼はきっちりとした性格で、毎朝自分で弁当を作り、曜日ごとに決めたネクタイをかえるという人でした。
そんな幹夫が、過労とストレスでうつ病になります。
それからうつ病とのたたかいが始まります。
果たして、二人はどうなるのか…という物語です。
主人公・髙崎晴子(ハルさん)役を宮﨑あおいが、その夫・髙崎幹夫(ツレ)役を堺雅人が好演しています。
これは大河ドラマ『篤姫』のコンビで息の合った演技で安心して観ることができます。
そして、大杉漣、余貴美子、梅沢富美男、田山涼成、吹越満、吉田羊などの俳優が脇を固め、いい味を出しています。
これは実際に細川貂々さんの体験がもとなので説得力があります。
うつ病という病が題材で、重い感じがするかもしれませんが、逆に明るく楽しく描かれて、泣かせて、感動させてくれる誠実な作品になっています。
それはこの劇中の言葉に優しさが込められているからです。
例えば、いきつけの古道具屋であるガラス瓶を晴子が見て「割れなかったことに、価値がある」と呟くシーンがあります。
この言葉は「生きている」そのこと自体が大切なことだと悟らせてくれます。
また、幹夫の日記で「大切なものって、いつも近くにあって、変わらないのに、時々どこにあるのか分からなくなってしまう。
よく見れば、手の届くところにあるのに、無くしてしまったと勝手に思ってしまう。
…」という言葉があります。
私たちは常に感謝の心を大切にしないといけないことを思い起こさせてくれます。
他にもこの作品には何気ないシーンで、いい言葉がたくさん出てきます。
実は私自身、うつ病を経験した者で、とても共感できました。
しかし、これは誰が観ても心温まる作品です。
観て絶対に損はない映画です。
第6位 「Laundry ランドリー (2001年)」
この映画を初めて観たとき、単調なので内容の良さに気付きませんでしたが、二度、三度観ているうちに、そのセリフと根底に流れる内容の濃さ、主人公の青年・テルを演じている窪塚洋介の演技はすごさに魅了されました。
この映画のすばらしいのは、心に傷を負った女性が、純真無垢な青年と出会い、心が癒されていく様を描いているところです。
水絵は小雪、サリーは内藤剛志が好演しています。
サリーがいい言葉を言います。
一つはテルの水絵への想いを「そういうの愛って言うんだ。
…少なくとも地球じゃ、愛って呼ばれるんだ」と表現します。
水絵が万引き常習犯だと警察から聞かされた後のテルの心理描写はすばらしく、心打たれます。
最後に、この映画でテルと水絵との会話で「想像して」という言葉がよく出ます。
思いやり・優しさは、他人への心を想像することからできるものです。
この言葉が心温める作品に仕上げています。
是非一度は観ていただきたい作品です。
第5位 「アントキノイノチ(2011年)」
この映画の原作はさだまさしの小説です。
キャッチコピーは「それでも、遺されたのは未来」で、心に傷をもった男女の成長を描いています。
主人公・杏平を岡田将生、ゆきを榮倉奈々、仕事場の先輩・佐相を原田泰造が好演しています。
これも何度も観ているうちに、はまりました。
最初の杏平の言葉は衝撃的で、この青年が、悲惨な過去を持つゆきと出会い、成長する姿を見事に描いています。
そして、ゆきが過去を杏平に告白する場面は涙ものです。
また、遺産処理をしながら杏平の「人間は死ぬときはひとりだ。
死はひとりで迎えるしかないけれど、生きるには誰かとつながっていたい」という言葉からは、ささやかでも繋がっているものは大切であると諭されました。
最後の方の杏平とゆきの会話からは、辛い過去、大きな心の傷をもっていても「命」の大切さを知れば「生きる力」となるということを感じました。
最後は切ないけど観てください。
題名の意味も分かります。
第4位 「くちづけ(2013年)」
この作品は宅間孝行の脚本の舞台劇を映画化したものです。
この物語は実際にあった事件がモチーフで、余命わずかな父と知的障がいの娘の物語です。
貫地谷しほりが、ヒロイン・マコを演じ、すばらしいです。
特に、優しい橋本愛と現実的でドライな岡本麗の演技が、作品を奥深いものにしています。
また、宅間孝行はうーやん役、竹中直人はマコの父親で漫画家・愛情いっぽん役を演じていますが、二人の迫真の熱演には脱帽です。
コメディ風に物語は流れますが、内容はシリアスで、知的障がい者を取り巻く社会を訴えるもので、感動しました。
特に警察官の酒巻の言葉に、いっぽんが「障がいをもった子が警察に尋問なんか受けたらどうなると思う?
…生きるすべがなかったら、生きていていけるような世の中にすべきじゃないのか!」と激怒する場面は、考えさせられました。
最後は切なく悲しいですが、「生きていく大切さ」が描かれ、感動すること間違いないです。
第3位 「ソロモンの偽証 前篇・事件・ ソロモンの偽証 後篇・裁判(2015年)」
この作品は宮部みゆきの推理小説を原作とした映画で、生徒の自殺の真相を学校内裁判で究明する物語です。
生徒役はその熱演ぶりが伝わって好感がもてました。
特に、浅井松子役の富田望生の演技は拍手ものです。
不良・大出俊次役の清水尋也も良かったです。
脇を、佐々木蔵之介、永作博美、黒木華、松重豊、小日向文世らが固め、安心して観られました。
この映画は緊張感漂うシーンの連続で、目が離せません。
また、名ゼリフも沢山あります。
容疑者・大出をから罵倒された神原弁護士の「僕には将来のことに怯えている時間なんてない。
あるのは今だけだ」と言う言葉には「生」への覚悟があり、大好きです。
最後の藤野涼子の「ここにいる誰もあなたを裁けない。
…自分の罪は自分で背負っていくしかないんだよ。
いつか乗り越えるために」という言葉には、勇気をもらいました。
この映画は正直に生きることの難しさ、家族、友人の大切さを考えさせてくれます。
傑作です。
第2位 「カラスの親指 by rule of CROW’s thumb(2012年)」
題名からこの映画は何だろうと思って観ていました。
しかし、この映画を見終えたときに、この題名の意味がわかりました。
この物語は詐欺師の話です。
タケは阿部寛、テツは村上ショージ、まひろは能年玲奈、やひろは石原さとみ、貫太郎は小柳友が好演しています。
ただ、詐欺師という悪事をする人間ですが、5人がそれぞれ個性的で人間味溢れる優しさがあり、感情移入できます。
特に村上ショージと小柳友が、いい味を出しています。
タケとテツの掛け合いは明るくて面白いです。
最後の「アルバトロス作戦」のシーンは手に汗握ります。
最後のドンデン返しまでのシーンやセリフが大切なものとなっています。
コンゲーム映画なので最後まで絶対に観てください。
ラストで題名の意味が分かると思います。
テツがタケに「お父さん指だけが、他の指を正面から見られるんですよ」と言うラストは、心に響き、生き方を考えさせてくれます。
少々長いですが、必見の作品です。
第1位 「八日目の蝉(2011年)」
この作品は角田光代の小説が原作の映画です。
キャッチコピーは「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」です。
主人公・21歳の恵理菜を井上真央が、誘拐犯・希和子を永作博美が、友人・千草を小池栄子が好演しています。
あと、森口瑤子、田中哲司、余貴美子、劇団ひとり、田中泯などが脇を固めています。
特に永作博美、森口瑤子の演技は圧巻です。
このタイトルの意味は、最後まで見終わったときにわかります。
蝉は何年も地中にいて、やっと成虫になっても命は儚く7日間です。
もし、もう1日長く生きる蝉がいたら、その蝉は幸せなんでしょうか。
ラストシーンまでで涙腺を刺激されているのに、ラストの恵理奈のセリフで涙、涙です。
その前の永作博美の演技も凄すぎて「その子はまだ朝ご飯を食べていないの」と言う場面は威力抜群です。
最後に流れる中島美嘉「Dear」が良くて、この歌でまた涙で、この映画を締めくくります。
必見の感動大作です。
まとめ
今、さまざまな情報が垂れ流し・溢れたこの世の中で、何を信じて生きていくことが難しくなっていると思いませんか。
そんな感じを持っている人たちに、この世の中で「生きる」「生きていく」「どうやって生きていくのか」ということを考えさせてくれる映画を10作品あげてみました。
この世の中、過去の恥ずかしいこと、コンプレックス、トラウマ、先天的な障がいなどを持たずに、清廉潔白に自信をもって生きている人は少ないのではないかと思います。
しかし、それらとどう向き合って生きていくか、迷ったことはないですか。
今回紹介した映画は、その主人公、主要登場人物が、何らかの悩みを持ちながらも、それに向き合い、必死に生きていく姿を描いており、勇気・希望を与え、そして最後には心を温かくしてくれる映画ばかりです。
その描き方は、コメディ調、サスペンス調など様々ですが、どれも「生きる大切さ」「生き方」を考えさせてくれるものです。
勝手に無理矢理、ランキングをつけましたが、私的にはどれもお薦めのものです。
是非、参考にして、ご覧頂きたいと思います。