父親って何だろうと考えさせられる洋画ランキング

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強くて、頼もしくて、どんな時でも助けてくれて……そんな理想の父親像、父と子のお互いにとって何歳まで保てるものでしょう。


そもそもそんなイメージはない、という人も少なくはないはず。


それも仕方ありません。


だって父親って男ですよ。


いい人なんだけどね、意外とかわいいんだけどね、でもね……と語尾をあいまいにお茶を濁しておかないといけない男性にこれまでどれほど遭遇してきたことか。


よくよく振り返ってみればその最初が父親だったんです。


溜め息しか出ませんね。


そんな父親という存在をメインにした洋画3選を、ちょっと女性(娘)寄りの視点でお送りします。





第1位:「父、帰る」

父、帰る [DVD]

堂々の第1位がこれ。


これ以外に考えられません。


ロシア映画です。


12年家を空けていた父親がある日ふらりと帰ってきて、思春期の息子2人をつれて唐突な旅に出る。


言ってしまえばそれだけの話なのですが、この父親がもう何をしても威厳の絞り出しようもなくて、でもそれなりに立派な父親たらんとする想いだけは熱くてそれ故に空回ってしまって、観ていて居たたまれなくなりました。


息子たちに「もうちょっと大人になってあげて」と言いたくなるくらい。


しかし息子たちも難しいお年ごろだし、特に兄は弟よりも長く父と離れているせいで期待値も限りなくゼロに近いのですよね。


そこを何とかしたい!と名誉挽回や汚名返上に淡々と奮闘する父親というすれ違い必至の構図。


楽観的な展開を微塵も想像できません。


もっとこう、みっともないくらい必死な姿をあらわにしていれば何か違ったのかも……でもそれができないのが父親。


ここまで現実に忠実に再現しなくても良いじゃない!と難癖をつけたくなる程です。


素直に「ずっと放っておいてごめん」「これからは仲よくしたいんだよ」と言えば済むのに、現実でも父親ってそういうことはなかなかしてくれませんよね。


振り上げた手を降ろせない、それが父親という生き物だと思うしかない。


そう知っているはずなのに、いや、だからこそ、この父親はリアルを極めていました。


とにかく最高にリアルなだけに切ないやら情けないやら。


こんな疲れる父親、私だったら嫌だな。


と思いつつ、でもうちの父よりはましなのかもしれないと無意識にかばおうとしてしまう。


我ながらそんな自分に違和感が残ります。


映画だろうが現実だろうが自分の父親こそ世界で最低と決めつけたいという、妙な甘えの心理の発露なのかもしれませんね。


だってあの父親が世界最低だとしたらこの私の苦労は何なの?と叫びたくなりますから。





第2位:「日の名残り」

日の名残り (字幕版)

父親メインの話かというとちょっと違うのですが、主人公と父親の関係性がストーリーの進行に欠かせないので2位に。


イギリス映画です。


主人公はイギリスの貴族に仕える執事。


というのは過去の話。


今は昔を語る形式で進みます。


主人公の父親も執事で、作品中では一線を半分引退した副執事の役割を勤めています。


もうその設定だけで父親に同情を禁じ得ません。


息子が自分を追い越した瞬間は誇りで一杯だったことでしょう。


しかし老年となった今、自分は明らかに息子の邪魔になっている。


と自責しながらそれでも執事の誇りを捨てられず、何でもピークの頃のように、そう、まさに今この瞬間の息子のように仕事をこなそうとする父。


「それは老体に冷や水というものでは……」としか思えない働きぶりに感動している暇もなく、ひたすらハラハラしっぱなしです。


まったく素直じゃない父親なんですよね。


昔できたんだから今でもできる!なんて、理屈にもなっていません。


老いたらできなくなることが増えて当たり前なのに……。


息子に尊敬される父親であり続けたいという願いが強すぎて苦しむ姿にすら「そのストレスで次は何をやらかすんだろう」と身構えてしまいます。


困ったものですが、何故でしょう、どうにも憎めない。


そしてこの父を尊敬してやまない主人公をこそ、私は尊敬せずにいられません。


子が親をいたわることは美徳だと思っていましたが、プライドを傷つけることもある、いや、そのケースの方が多いのかもしれない。


多くの父親はいわゆる「大人」なのでそれを隠しているだけで、実は子が成長するごとに父は傷つけられ続けているのかもしれない。


と、ちょっと憂鬱な想像をしてしまいました。


これが母親と娘の関係だったらもっとずっと分かりやすいんですけれど、父親と息子ってもうちょっと複雑なのかな。


どうなんでしょう。


我が家の兄と父を参考にしたいのですが、どうにも参考にならないところが案外参考になっているんでしょうか。

第3位:「北京バイオリン」

北京ヴァイオリン [監督:チェン・カイコー] [レンタル落ち]

この父親は良い父親です。


とても良い父親です。


よって3位。


中国映画です。


バイオリンの才能あふれる息子のためにひたすら己を捧げ尽くす、それは文字通り父親の鑑。


現実では存在し得ないでしょう。


我が子のためならばと高い理想を持つ父親はこの世の中に大勢いて、まずまず良い線まで行ってはいる気がします。


でもそこは父親も人間というあの絶対的なセオリーによって理想の達成は阻まれるものなのですが、この父親は違う。


息子のためなら一瞬の躊躇いもなく命も差し出すことでしょう。


息子が悲しもうと何だろうと、呼吸をするようにそこまでやれてしまう人です。


かといって息子をスポイルすることもなく、ちゃんと躾もしている。


息子の才能の最高の理解者で、そしてそれは決して過大評価でも親バカでもない。


おかげで息子もすごく良い子です。


だから3位なのです。


この父子は何のてらいもなく愛しあっています。


それはもしかしたら、息子が反抗期以前だからかもしれない。


しかし現実でも、大人になっても仲良しの父子って存在するみたいですね……にわかには信じがたいことですが、事実なら認めるしかありません。


であればこの作品の父子関係もものすごく現実離れしているわけではない。


けど父親単体だけを見ると、どうしてもファンタジーだと思ってしまう……。


息子に突出した才能がなければこれほど褒められる父親にもなれなかっただろうなと考えると、非常に幸運で幸福な父親でもあるのです。


が、一体どうなんでしょう……。


この子なくしてこの父なしというのは、果たしてどうなんでしょう……。


時に献身的で奉仕的で盲目的な父親は、いると思います。


でも常に、というのはちょっと考えにくいですね。


そう、今こそ、だって父親だって人間だから、と私が大声で主張したくなります。


父親があんなに完璧だと子の立つ瀬がなくなるじゃないですか。


子どもだって人間だと言い続けたいのです。


できれば、どちらかが死ぬまで。


続編があるなら今度は是非反抗期で手の付けられない息子にバージョンアップしてくほしいと願ってから約15年が経過。


続編の兆しはありませんね。


良いんです、名作ですから。

まとめ

「父親って何だろう」と考えさせてくれる洋画3選、いかがでしたか。


父親って何でしょうね。


まず面倒なテーマであることに疑いようもありません。


母親も相当ややこしいですが、父親というものはどうも分かりません。


分かりやすそうで分かりません。


不思議を通り越して不可解です。


思春期の頃は母親との関係に難儀した私ですが、成人してからはどちらかというと父親のやること為すことに悩まされて来ました。


これは私が25歳の時に母が他界して父と兄が遺ったという事情もかなり関係してくると思います。


それまで男2人、女2人だった家族構成が崩れて、「まったく男って奴は」という場面が増えたわけです。


同じ男でも父と兄では当然父の方が歴史は長いはずなのに、兄に輪を掛けてお話にならないというのが本音ですし、実情です。


自然と映画を観ていても父親という存在に注目してしまうようになりました。


何だか悔しい気もしますが仕方ありません。


そういった次第ですので、個人的な心情を惜しげもなく反映させた3選となりました。


私もまだまだ子どもだな……と書きながら改めて思い知らされたわけですが、それはともかく、父親に悩まされている娘さんに特におすすめしたい作品ばかりです。


是非とも父親の不在時にご鑑賞ください。


そんな時に限って予定より早く父、帰るだったりしますので、ゆめゆめ油断なさらずぬかりないスケジュールを組んで、ゆっくりお楽しみくださいね。







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