歴史に残る短編洋画ベスト10ランキング

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第10位 「愛の唄」

ジャン・ジュネが唯一監督した短編で、当時としてはここまであからさまな性的表現は恐らくショッキングだっただろうと思います。


露骨でグラフィカルな性が溢れている現代ではこの映画も骨董的なものになっていますが、まだゲイ差別の激しかった時代の資料として貴重なフィルムだと言えそうです。





第9位 「花火」

ケネス・アンガーはゲイ的感性とはどういうものか、ヘテロの人間にも明らかに示した先駆者で、その短編群は歴史的な価値があるといえます。


処女作の「花火」はとりわけ分かりやすく、アンガーの性的衝動をそのまま作品化した印象です。

第8位 「ビッグ・シェイブ」

スコセッシ監督が長編処女作の「ドアをノックするのは誰?」と同時期に発表した短編の代表作。


ひとりの男がカミソリで髯を剃り、ひたすら血まみれになってゆくという内容です。


当時泥沼の様相を呈していたベトナム戦争のメタファーとされ、のちのスコセッシの暴力描写への嗜好を早くも示しています。

第7位 「とんだりはねたりとまったり」

後にビートルズ映画で有名になるリチャード・レスターが俳優の仲間と一緒に即興で撮ったスケッチ集で、当時評されたサイレント喜劇の再現というより、モンディパイソンのテレビの先蹤となったという方がぴったり来ます。


本を望遠鏡を使って読んだり、針を持ったままレコードの周りをぐるぐる回って音を立てる場面などナンセンス極まりなく、大爆笑とはゆかなくともニヤニヤ笑えます。

第6位 「ふくろうの河」

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このフランス製作の短編は、アメリカでは「トワイライト・ゾーン」の一編としてテレビ放映されました。


それで分かる通り、結末に仕掛けがしてあって、何も知らずに見た方が楽しめるでしょう。


のちに「冒険者たち」などを撮るロベール・アンリコ監督の出世作となりました。

第5位 「赤い風船」

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わずか三十四分のこの短編で、監督脚本を担当したアルベール・ラモリスはアメリカ・アカデミー賞の脚本賞を受賞しました。


また、当時のキネマ旬報ベストテンにも短編としては珍しく入選していて、この作品が世界中で高い賞賛を浴びたことが分かります。


何と言っても結末が印象的で、一度見たら「自分も……」と思ってしまう人も多いでしょう。

第4位 「パ・ド・ドゥー」

ノーマン・マクラレンは実験アニメで知られた人ですが、この「パ・ド・ドゥー」はアニメーションではありません。


何度もフィルムの焼付を重ねることで、バレエ・ダンサーの動きに幻想的な味付けをしています。


特にクライマックスとも言える回転の部分では抽象画が動き出したような快感があり、まるで視覚に訴える音楽を聞くようです。

第3位 「アンブリン」

スピルバーグが二十一歳のときに作った三十五ミリによる自主制作の短編。


その構図の見事さ、編集のなめらかさはすでにプロ級で、わずか五年後に「激突!」を作ってしまうのも分かる俊才ぶりです。


また、ロード・ムービーということで、処女作「続・激突! カージャック」へと直接につながる題材でもあります。

第2位 「アンダルシアの犬」

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映画史上最も有名な短編映画かもしれません。


ルイス・ブニュエルが二十八歳の時、盟友サルバドール・ダリとアイデアを出し合って作った映画で、いわゆるシュールリアリズムを代表する作品です。


今見ても、冒頭のカミソリの場面、それに腐ったロバの首のショットなどはショッキングで、この映画を見た人は現実を見る目が変わってしまう、と言いたいほどです。

第1位 「世界の全ての記憶」

「二十四時間の情事」「去年マリエンバートで」などで知られるアラン・レネ監督の演出の特徴はその造形的な構図の見事さ、それに流麗な移動撮影です。


この「世界の全ての記憶」はまだ長編に取り掛かる前に制作された図書館についてのドキュメンタリーですが、本の並んだ棚をなめてゆくカメラの動きはそれだけで映画的快感を感じさせます。

まとめ

劇場では長編の添え物として上映されたり、映画祭などの特殊な機会でしか見ることの出来ない短編映画ですが、長編にはないような詩的な面白さや、興味深い内容のものが映画史には数多くあります。


個人的に好きな十作品をリストアップしました。







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