残酷な大人の愛の洋画ベスト3
しみじみ「愛って残酷」と思ってしまう洋画3作品をご紹介します。
3作品とも派手な見せ場もなく、どちらかというと淡々として地味な印象です。
ですが主演がアカデミー賞女優やベテラン女優で、その素晴らしい演技力に映画の世界にグイグイと引き込まれること間違いなしです。
年月を重ねた大人の愛の結末に、驚きとやるせなさを感じるかもしれません。
これが現実だとかなり痛いですが、映画で覗き見する分にはきっと良い経験になるはずです。
第1位:「8月の家族たち」

主演はメリル・ストリープ。
役は病後の治療で処方された薬の重度の依存症になっている、毒舌家のヴァイオレット。
舞台はオクラホマの田舎。
8月のある日、ヴァイオレットの夫が突然失踪したため、3人の娘と、妹家族(妹・その夫・息子)が集まったことでストーリーが進んでいきます。
自宅療養中のヴァイオレットは、ガウン姿で始終たばこを吸いながら、だれかれ構わずに噛み付いてばかり。
家族との衝突は生々しく、真夏の乾いた映像と重なり息が詰まるものがあります。
こんな人が妻なら失踪もしたくなるよね、と思うがしかし。
この家族、誰もが問題のある秘密を抱えていて、それが物語の中で幾重にも絡み合っているのです。
ヴァイオレットの秘密は終盤で明かされますが、その衝撃にヴァイオレットに対する見方がガラリと変わります。
夫の裏切りの秘密と、それを知っていることをずっと隠してきたヴァイオレット。
それがヴァイオレットの愛というならば、なんと残酷な愛なのでしょう。
自殺した夫が湖のボートで見つかり、家族は転がるように崩壊していきます。
バラバラになった家族たちは、最後まで誰も救われないままに人生が続いて行きます。
エンディングで一人途方に暮れて座り込むヴァイオレットの姿がとても印象的です。
長女役にジュリア・ロバーツ、甥っ子役にヴェネディクト・カンバーバッチと、出演者も豪華。
この作品でメリル・ストリープは主演、ジュリア・ロバーツは助演でアカデミー賞Wノミネート。
第2位:「ブルージャスミン」

主演はケイト・ブランシェット。
ストーリは一言で言うと「セレブ婚からの転落」。
実業家でお金持ちのハルとの結婚生活が破綻したジャスミンは、サンフランシスコの豪邸から一転、シングルマザーの妹の住む質素なアパートに移り住むことに。
セレブとは正反対な生活に、ジャスミンのプライドは現実を受け入れられず、次第に精神が病んでいきます。
美しいケイト・ブランシェットが虚ろな目でぶつぶつ独り言を言ったり、精神安定剤をフリスクのようにポンポン口に入れるところは、かなり怖いものがあります。
ジャスミンのような、美貌と運だけで成り上がった女性の人生の転落は、きっと観る人は同情なんてしないはずです。
ジャスミンは最初から最後まで「痛い女」です。
なんとかセレブに戻るために、資格を取ろうとしたり、身分を偽って裕福な男性と付き合ったりしますが、何事においても考えが浅はかなので上手くはいきません。
しかし、ジャスミンはいたって真剣に行動するので、シリアスを通り越してユーモアさえ感じます。
安易な愛で結婚し、安易な理由(夫が若い女性に恋をした)で夫の愛を失ったジャスミン。
映画の終盤に、人生を転落させる原因を作ったのは、安易な行動を取ったジャスミン自身だったことが明かされます。
とことん短絡的なジャスミン。
けれど、精神を蝕まれていくジャスミンの姿が、自分の浅はかさで夫を永遠に失った後悔の念に苛まれているようにも見えてくるのです。
ジャスミンが本当に夫を愛していたかはわかりませんが、ジャスミンの残酷な愛は、夫を破滅させるだけでなく、自分自身をも破滅へと向かわせたのです。
この作品でケイト・ブランシェットはアカデミー賞主演女優賞を獲得。
監督はウディ・アレン。
第3位:「まぼろし」
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フランスの大女優、シャーロット・ランプリングが主演。
マリーとジャンは50代で結婚25年の子どものいない夫婦。
二人はフランスの海辺の別荘にヴァカンスで訪れ、そこで事件が起こります。
海岸でマリーがうたた寝をしている間に、ジャンが海に入ったまま行方不明に。
事故か、失踪か、自殺か。
捜査の甲斐もなくジャンは見つからず、マリーはショックを受けたままパリへ帰ります。
何故かパリの自宅にはジャンがいて、マリーは当たり前のようにジャンと接し、話しをします。
映画のタイトルは「まぼろし」。
マリーがジャンの幻影を見ていることは容易に想像がつきますが、深い喪失感を抱えたマリーにとってはまぼろしではなく、現実。
ジャンがマリーの情事を側で見ているという異様さは、マリーが底なしの哀しみに落ち続けていることを感じさせます。
その後マリーは、ジャンがうつ病で薬を飲んでいたことを知り、ジャンはうつ病で自殺したのだという納得できる答えを見つけます。
義母にその事を知らせに行きますが、義母は、ジャンは自殺したのではなく、マリーに飽き飽きして失踪したのだと冷たく一蹴。
映画が始終マリーの見ている幻影を映している中、ここではマリーが暴力的に現実(それが真実かどうかは別として)に連れ戻される、かなりインパクトのあるシーンです。
警察からの連絡で、DNAの90%がジャンと判明した水死体が見つかっても、腕時計が違うと笑って否定するマリー。
ジャンが自殺したのか、失踪したのはわからないループに再びマリーは囚われます。
突然夫を失ったマリーの愛は行き場を失い、残酷な幻影を見続けるのです。
まとめ
3作品はどれも中年(もしくは初老)の女性が夫を失う映画です。
結末が物悲しくやるせないのですが、人生のリアルさを感じさせます。
こんな大人の愛もあるのね、と恐々とみて欲しいです。
一緒に長い年月をすごした夫婦だからこそ、その成熟した愛は残酷にもなるのかもしれません。
名女優の名演技が光る評価の高い映画ばかりです。
ぜひ一度ご覧になってみる事をおすすめします。