純粋さが美しくも悲しい洋画ベスト3
人はみな、思春期を通り過ぎて大人になっていきます。
その過程では、さまざまな出来事、そして自身の成長がありますよね。
『純粋さが美しくも悲しいおすすめ洋画ランキング』では、
多感な若者の揺らぐ心、人生への不安や周囲との軋轢、
そういった誰しも感じてきた、繊細な心の動きをまるで絵画のように大切に描きつつも、
胸の芯から冷え切るような悲しい空気で作品自体を包み込む、
純粋さと狂気さが入り混じった洋画をご紹介します。
第1位:「ぼくのエリ 200才の少女」
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日本では2010年に公開されたトーマス・アルフレッドソン監督のスウェーデン映画。
「MORSE -モールス-」という小説が原作となっていて、
アメリカでは「モールス」のタイトルでリメイクされている作品です。
主人公は12才の少年オスカー。
母子家庭でいじめられっ子のオスカーは
ある日、隣の部屋に引っ越してきた「エリ」と仲良くなります。
同じ頃、オスカーの住む町では不信な殺人事件が相次いで起こるようになり…
と、あらすじはこうです。
この映画をご存じない方からすると、このあらすじでは物足りないかもしれません。
けれど、映画をご覧になった方には「これぐらいで十分だ」と感じるでしょう。
何せ、この映画は何をどう書いてもネタバレのようになってしまうからです。
そして、文章にするには難しく、複雑で、繊細な物語なのです。
私がこの作品を第1位にした一番の理由が、「オスカーとエリの美しさ」にあります。
エリからイジメに反撃するよう勇気づけられたオスカーは、
強くなるためにトレーニングに通い始め、どんどん自分に自信をつけていきます。
一方エリは、そんなオスカーを頼もしく眺めています。
物語の中盤からは徐々に、二人の関係に微妙な変化が現れるとともに、
次々と起こる殺人事件の不穏な空気が立ち込めてきます。
この映画をジャンル分けするのは非常に難しいと私は思いました。
ですがあえてジャンル分けするとしたら、「純愛」かもしれない、とロマンチストな私は思います。
12才の少年達の儚い愛の話。
おすすめです。
第2位:「少年は残酷な弓を射る」

日本では2012年に公開されたリン・ラムジー監督の作品。
旅行関係のライターとして働いていたキャリアウーマンのエヴァは、
ある日、恋人との子を妊娠します。
望まない妊娠だったエヴァは、頑張って我が子を愛そうとしますが、
生まれてきた息子・ケヴィンは、エヴァがどんなに可愛がっても
反抗的な態度をとります。
無理やりに笑顔を作り、息子と打ち解けようと頑張るエヴァを、次々と卑劣な方法で裏切っていく
ケヴィン。
「この子は異常かもしれない」。
夫に相談しても真剣に受け取ってもらえず、
エヴァは疲弊していきます。
そんな中、とうとうケヴィンは残酷な事件を起こします…
余談ですが、本作品は私の心の中の『母親とは一緒に観たくない映画ランキング』にも
ノミネートしています。
悪魔のような仕打ちで華麗に、かつ残酷にエヴァを裏切っていくケヴィンも相当ですが、
望まなかった妊娠、けれど必死で頑張って『母親』をしているエヴァにも随所に悪意の破片を感じます。
…余談は置いておきますが、
エヴァの回想の中を漂うようにして、話は進んでいきます。
回想の中の豊かな色彩や、一部だけアップにした映像はとても効果的に使われていて、
要所要所で胸を打たれます。
そして何より、ケヴィンを演じるエズラ・ミラーの性格の歪んだ美少年っぷりにはやられます。
不敵な笑みを浮かべてエヴァを見つめるケヴィンは本当に悪魔そのもの。
だからこそ、ラストのシーンのケヴィンの言葉はじんわりと心に響くものがあるのだと思います。
第3位:「明日、君がいない」

2007年日本公開のムラーリ・K・タルリ監督作品。
日本でのキャッチコピーは「追いつめられても、SOSが届かない」。
午後2時37分に高校で起こった「誰か」の自殺を、その日の朝から遡って映し出します。
優等生のマーカス、その妹のメロディ、人気者のルークとその彼女サラ、
ゲイであることで差別を受けるショーン、排尿障害のためイジメを受けるスティーブン、
それぞれが悩みを抱えながら暮らしています。
2時37分、自殺したのは誰だったのか…。
とてつもなく巧みに練られた作品です。
けれど「してやられた!」というような、ギミックに対する感想というよりは
その事実に「あぁ…」と心から悲しくなる、そんな感想を私は持ちました。
軸となる登場人物それぞれが、悩みを持っています。
それは10代ならではのようでいて、一生続いていく人生の課題でもあるようなものです。
ですが、痛々しく繊細な彼らにとっては「自殺」を考えてしまうような問題でしょう。
この作品は、単なる謎解きではなく、彼らの等身大の人生を丁寧に映し出したものです。
タルリ監督が実体験をもとにこの作品を作ったという事も、
このリアルさの理由かもしれません。
まとめ
『純粋さが美しくも悲しいおすすめ洋画ランキング』、いかがでしたか?
10代の世界を描いた物語は、時に純粋で美しく、時に残酷で悲しいものです。
観終わった後に「そりゃないよ…」と感じるものもあるかもしれません。
けれど、その無常さがまた美しく、意味のあるものだと思いませんか?
すっかり大人になってしまって、大雑把に世界を見ている自分に気づいた時、是非ご覧ください。