すじの通った男の生き方がなんだかいい時代劇ランキング
理想的な男性像というランキングがあるとかならず上位にはいってくるものに、「優しい人」や「おもしろ人」というのがあります。
現在のなかでは、凛として、背中に1本棒が入ったようにピンと背筋の伸びた生き方の男が求められているのかどうかもわかりませんが、そんな時代だからこそ惹きつけられるものがある侍達の物語です。
第1位:「たそがれ清兵衛」
藤沢周平さんの原作を、山田洋次監督初の時代劇で撮られた作品で、主演が清兵衛に真田広之、清兵衛を慕う朋江に宮沢りえさんというキャストになっています。
清兵衛は腕の立つ武士でありながら、毎日定時になると仲間からの誘い等を断って、家に帰ります。
家に帰る清兵衛を待っているのは、老いて今でいう認知症を抱える母と幼い2人の娘、そして労咳で死んだ妻の薬代等でかさんだ借金だけでした。
家族の世話や借金返済のために内職に明け暮れ、ボロボロの身なりにかまうことまない清兵衛に城内の仲間たちがつけたあざなが「たそがれ清兵衛位」でした。
家族の世話や内職で疲れて、昼間はウトウトしたりしてしまいますが、夕暮れになると元気を取り戻すことと、彼の身なり等からつけられたものでした。
そんな清兵衛のもとへ友人の妹朋江が出入りするようになります。
彼女は嫁ぎ先から元夫の暴力等が原因で出戻っていて、2人は昔は思いを寄せ合った中でもありました。
そしてある日、清兵衛は上役の命を受け、藩にとっての罪人を討つためにでかけるのですが、彼の腰あるのは刀ではなく、木刀だけでした。
武士の魂ともいえる刀まで謝金返済のために打ってしまっていたのでした。
出かけるまでに朋江と時を過ごした清兵衛は彼女に無事に戻ってきたら一緒になってほしいと願うのでしたが、彼女には良縁があって、それを受けてしまった後でした。
傷だらけになりながら帰ってきた清兵衛を待っていたのは、、、、というお話なんですが、「武士は食わねど高楊枝」ではないですが、見栄や欲望を前面に出すことなく、淡々と丁寧に生きた清兵衛の姿を描いた作品で、なんだか身につまされます。
第2位:「のぼうの城」
和田竜さんの原作を野村萬斎の主演で映画化された作品です。
「のぼう」とは城内はもとより城下の百姓までもが彼につけたあざなで「でくのぼう」の「でく」をとったものです。
これでもわかるように彼は決して、威厳があったり才気を発したりするような侍ではないです。
普段はひたすら平和を愛し、ふらふらと城下に出かけて行っては不器用で迷惑がられながら百姓仕事を手伝ってよろこんでいるような男でした。
そんな城下に、天下統一を目指した秀吉軍が2万の軍勢で押し寄せます。
藩主の命で、降伏することに決まっていたのですが、なんとのぼうが戦うと言い出したのです。
相手方の人間を馬鹿にしたような態度に腹をたててのことでした。
そんなのぼうにびっくりした城内のものですが、もともとつわもの揃いの面々、ついに戦うことになりました。
そして、なんと城下の百姓までもがノボウが言うのならと一緒に戦に加わったのでした。
2万の兵に対して、500の兵で戦い一度は敵を蹴散らすのですが、水攻めという絶体絶命のピンチがおとづれます。
ここでも、城に籠城するみんなを救ったのはノボウの人柄からくる「人気」でした。
そして命を的にして城を救うことができたノボウですが、普段は目立つことなく、例え、馬鹿にされようといざという時にみんなに助けてもらえるような人間であるともに、自分の欲をすてて万事にあたる姿が心に残ります。
第3位:「蜩ノ記」
映画「蜩ノ記」には2人の美しい侍が登場します。
1人は役所広司さん演じる戸田秋谷ともう1人は岡田准一さん演じる檀野庄三郎です。
秋谷はある罪を背負って、10年後の切腹を言い渡されます。
そして、それまで城下のある村に幽閉と藩史の編纂を命じられるのです。
そして、城内での刃傷沙汰の責により秋谷の監視とその内容を見届ける役目を言い渡されるのが庄三郎です。
しかし、残された日々が尽きようとしているなかで、何事にも動じることなく、凛とした姿勢を崩さずに丹念に毎日を生き、村の百姓たちからも慕われる秋谷と接するうちに、その人柄に影響された庄三郎は次第に秋谷に感化されていき、彼の起こしたという事件にも疑念をいだき、藩史の編纂のためにも独自に調べるようになるのでした。
実は、秋谷は初恋の人であり、寺島しのぶ演じる亡き先代の藩主の側室となっていた松吟尼を救い、そして先代からの願いを聞く形で罪を背負い、切腹を決意していたのでした。
途中、藩史の内容に関して取引のような形で助命のチャンスなどありながら、それに応じることもなく、自らの役目を果たした秋谷は、家族に別れを告げて切腹の場に赴くのでした。
また庄三郎も最後まで秋谷に寄り添い、自分の人生を貫きます。
そんな映画ですが、覚悟を決めて生きる人間の気高さがその映像の美しさとともに描かれています。
堀北真希演じる秋谷の娘薫と庄三郎の祝言、原田美枝子演じる妻織江と秋谷の別れの場面などは過ぎ去りし日本の美しさを見せてくれているようです。
まとめ
どの映画もそれぞれ生き方は違いますが、覚悟を決めて、潔く生きた男の姿を描いた映画です。
時代劇はその画面風景にもうすなわれつつある日本の風景の美しさが描かれていて、これもまた心を打ちます。
なにより、うしなわれつつある男の生き方みたいなものが描かれていて、日常に追われる身としては心にふっと爽やかな風が吹き込んでくるような気持ちになります。