呼吸させて!笑いのじゅうたん爆撃映画3選
「笑い」が好きなのは日本人に限らず、世界中のたいていの人たちがそうだと思います。
しかし、アメリカ人のコメディにかける情熱は、あきれると同時に感心せざるを得ない熱量です。
なぜそこまで…というくらい、とにかく笑いを詰め込まなきゃ気が済まない。
そんな高密度のギャグ地獄を誇る映画3本を、独断と偏見だけで選んでみました。
第1位:「フライングハイ」

1980年公開の大ヒット映画。
パロディやナンセンスギャグを山盛りで詰め込んだ、とにかくサービス過剰がうれしい傑作コメディ。
ベースになっている映画は、パニック映画の草分け「エアポート」シリーズ。
といってもストーリーを書くのは意味がないくらい徹底的にふざけのめした映画です。
息つく暇もなくこれでもかと繰り出されるギャグの数々には、そのくだらなさにもかかわらず畏敬の念すら覚えます。
元ネタを知らなくても、思い切り振り切ったパフォーマンスでおもしろさは十分に伝わるはず。
特にこの映画で遅咲きのブレイクを果たしたレスリー・ニールセンは、「裸の銃を持つ男」で大スターの仲間入りをしますが、本作でそのとぼけた無表情で好き放題やらかすスタイルは確立されています。
本作は低予算映画ながら、予想を超えた大ヒット作となり、続編も作られました。
しかし決してまぐれ当たりに見えないのは、作り手の観客に対するサービス精神と、「絶対面白いものを作ってやる!」という意気込みが全編にみなぎっているせいです。
第2位:「裸の銃を持つ男」

そのレスリー・ニールセンの大出世作が本作。
1988年公開。
ロス市警の剛腕デカ、フランク・ドレビン刑事の活躍を描きます。
活躍と言っても、事態をありえないレベルで混乱させるのが主な役目。
そうしてやりたい放題やらかした挙句、なにやらよくわからないうちにヒーローになっている、という映画です。
上の「フライング・ハイ」同様(作ってる人たちが同じなので)、むやみやたらにギャグを挟み込んでくるサービス精神はここでも健在。
サービスというよりもはや強迫観念にも見えてきますが、やっぱりどうしようもなくくだらないんだけど、ここまでされればもう頭を下げざるを得ない、というやり切りぶりです。
なんでもない状況が、ドレビン刑事にかかればあっという間にとんでもない事態にエスカレートしていく。
そんな有様をみながら、あきれつつ最後にはほとんどむりやり爆笑させられます。
本作のあと二本の続編が作られますが、どれも同じでやっぱり面白い。
笑いのツボはそれぞれですが、これで笑えなかったら何を見て笑うんですか、と真顔で聞きたくなる映画です。
第3位:「名探偵登場」

こちらは上二作とは毛色の違う作品。
脚本は舞台出身の大御所ニール・サイモン。
数々の賞を受賞した、ブロードウェイに限らずアメリカエンターテイメント界を代表する作家です。
舞台はとある大富豪の屋敷。
そこに世界各地から有名な探偵と、その助手たちが集まってきます。
彼らが集められた理由、それはその屋敷の主、トウェインから出される謎に対し探偵たちに推理合戦をさせるためでした。
次々におこる不可解な出来事、それに対しいちいち珍妙な推理を披露する探偵たち。
ほとんど好き勝手言いたい放題な有様で、事態はどんどん混乱の度をましてゆきます。
展開は軽妙でスピーディー。
ヒネリもふんだんにきかせています。
粋で刺激的な、大人のコメディーといったテイストの作品です。
爆笑するような作品ではないですが、笑いの密度はとにかく濃く、展開の妙や名優たちのいきいきした名演で、見ている間中ニヤリとさせられっぱなし。
肩がこらずに楽しめる、一流の娯楽作品です。
まとめ
最初に言った通り、アメリカ人のコメディー熱はちょっと異常なくらいです。
言葉と文化の違いで、その笑いを十分に理解することは難しいものの、「面白い事やってやるぜ!」みたいなノリは十分以上に伝わってきて、言葉も人種の違いも軽く乗り越えてきます。
僕はそういう「面白いことにすべてを懸ける」みたいなところにかなりやられます。
日本の笑いももちろん面白いけど、アメリカコメディはちょっとすごいんだよ、ということが伝わればな、と思います。